フリーランス法人成りの目安は?いくらからがお得か解説!(第34回)

更新日:

こんにちは!

税理士の脇田みきです。

 

 

今回は法人成り」についてご紹介いたします。

 

フリーランスになって順調にお仕事し、所得(利益)が多くなってくると、その所得(利益)によっては「法人成り」をした方が節税になる場合があります。

 

個人事業主として仕事をするのでなく、会社を作って自分が社長になるのです。

 

 

「え、でも会社作って社長になったら、事務所構えて従業員雇って、いいスーツ着て仕事しなくちゃいけなくなるんじゃないの?」

 

…いいえ。

社員は代表取締役であるあなた1人、事務所もこれまで通り自宅で構いません。

 

いいスーツは着たければ着てください。

 

 

実質はこれまでと変わらない働き方でも、法人成りをすることで税金がお得になる可能性があるのです。

 

さらに「社長~♡」と呼ばれるようになります。

 

 

なぜ、法人成りをするとお得なのか?

どうして、所得が多くなったら法人成りした方が税金がお得になるかご説明していきます。

 

それは、所得税(個人事業主)は「超過累進税率」であり、法人税(会社)は「一定の税率」(正しくは2段階)だからなのです。

 

 

所得税と法人税の税率

 

 

法人税(※資本金1億円以下) 所得税
所得 税率 課税される所得 税率 控除額
~800万円 15.0% ~195万円 5%
195~330万円 10% 97,500円
330~695万円 20% 427,500円
695~900万円 23% 636,000円
800万円を超えた分 23.2% 900~1,800万円 33% 1536,000円
 1,800~4,000万円 40%  2,796,000円
4,000万円~  45%  4,796,000円

※この金額以下か、金額以上かで税率が変わります。

 

 

これだけを見ると、個人の「課税される所得」が330万円を超えたら、法人税(左側)の方がお得になりそうですね?

 

 

(※所得控除が基礎控除しかない場合。配偶者控除とか社会保険料控除とかある場合はそれもここに入ります)

 

 

つまり、事業の利益が、330万円+65万円+38万円=433万円を超えたあたりから、お得になるかも?と思えてきます。

 

 

法人成りするとどのくらい節税になるのか?

ではここで、事業の利益が500万円で個人事業主が法人成りした場合、どのくらい節税になるのかを検討してみましょう。

(実際には個々の細かい状況により変わりますが、ざっくりと計算して解説)

 

 

ケース1:個人事業主の場合

 

課税される所得=500万円―青色申告特別控除(65万円)―所得控除(38万円)

       =397万円

 

法人税(※資本金1億円以下) 所得税
所得 税率 課税される所得 税率 控除額
~800万円 15.0% ~195万円 5%
195~330万円 10% 97,500円
330~695万円 20% 427,500円
695~900万円 23% 636,000円
800万円超えた分 23.2% 900~1,800万円 33% 1536,000円
 1,800~4,000万円 40% 2,796,000円
4,000万円~  45%  4,796,000円

※この金額以下か、金額以上かで税率が変わります。

 

 

①所得税=397万円×20%―427,500円

    =366,500円

②住民税=397万円×10%

    =397,000円

③事業税=(500万円―290万円)×5%

    =105,000円

※事業税は利益290万円まではかかりません。

 

税金計 = ①+②+③=868,500円

 

 

 

ケース2:法人成りをした場合

 

この場合、会社の利益と同額(500万円)を社長に役員報酬として支払い、法人の利益を0円にすることとします。

 

社長個人の所得税

給与所得=500万円―(500万円×20%+54万円) ←()内は給与所得控除

    =346万円

 

課税される所得=346万円―38万円

       =308万円

 

法人税(※資本金1億円以下) 所得税
所得 税率 課税される所得 税率 控除額
~800万円 15.0% ~195万円 5%
195~330万円 10% 97,500円
330~695万円 20% 427,500円
695~900万円 23% 636,000円
800万円超えた分 23.2% 900~1,800万円 33% 1536,000円
 1,800~4,000万円  40%  2,796,000円
4,000万円~ 45% 4,796,000円

 

 

①所得税=308万円×10%-97,500円

    =210,500円

②住民税=308万円×10%

    =308,000円

 

個人の税金計=①+②=518,500円

 

 

会社の法人税等

会社の利益=500万円―500万円(役員報酬)=0円

 

法人の税金計=7万円 ←均等割額(赤字でも納める税金)

 

社長個人と法人の税金の合計…518,500円+7万円 = 588,500円

 

…一人黙々と計算してしまい、なにしてんの??

て声も聞こえてきそうですが(汗)、

 

要するに、ものすごくざっくりと計算して、

事業の利益が500万円の場合には

 

868,500円-588,500円 =280,000円 

 

も、税金が安くなる(かもよ)ということです。

 

 

つまりですね、

個人の所得税は利益が大きくなればなるほど税率が大きくなって、最大45%になります。

 

それに対して法人の税金は、利益800万円までと800万円超で税率が変わるけど、どんなに多くても23.2%だから、利益が大きくなればなるほど、節税効果が大きくなります

 

 

法人は社長個人に給与を払う(経費にする)ことができますが、個人事業主は自分に給与を出すことはできません。

 

そして法人から給与をもらった社長に所得税はかかりますが、「給与所得控除」を差し引いたあとに税金がかかるから、お得になるんですね。

 

 

また、取引先によっては「契約は法人との方が好ましい」なんてこともあるので、そのメリットは大きいかもしれません。

 

また、売上が1,000万円を超えると、その2年後から消費税がかかってきますが、法人成りすると別人格となり、またゼロからリセットし、2年間は免税事業者でいられます。

 

 

消費税率10%になるし、そのメリットはかなり大きいです。

 

 

法人成りにはデメリットもある

ただし、28万円の節税効果を見て、即法人成りした方がいい、とも言い切れない点もあります。

 

社会保険への加入

 

まず、役員1人でも、法人成りしたら社会保険に加入しなければいけません。

 

実際には中小企業で役員1人とか従業員数人の会社で、加入していない会社もけっこうありますが、

年金事務所からお尋ねや指導が入る可能性があります。

そうなったらずーっと無視するわけにもいきません。

 

そして会社の負担する社会保険料って結構大きいです。

 

 

確定申告時の税理士への顧問料や決算料の支払い

 

また、個人事業のときの確定申告は、頑張って自分でやる方もいらっしゃいますが、

法人の確定申告は、税理士にお願いした方がいいと思うので(個人の確定申告とは全然違います)、税理士に支払う顧問料や決算料が必要となります。

 

これは事業の規模や顧問税理士によって金額は変わるとは思いますが、それなりにかかるでしょう。

 

 

廃業手続き

 

そして廃業のとき。

今は廃業のことなんて考えないと思いますが、個人事業を廃業するのは「廃業届」を出せばいいので簡単です。

 

それに対し、会社を解散&清算するのって、けっこう手続き等大変です。

 

「作ってみたけどやっぱりやーめた」

 

ってそんなに気軽に「ちょっと作ってみたよ?」というわけにもいきません。

法人設立にもお金かかりますし!)

 

 

法人成りはした方がいい?しない方がいい?まとめ

 

じゃ結局、法人成りした方がいいの?

しない方がいいの?

 

結論はどっち??

 

て怒ってる声が聞こえてきたので、ざっくり言います。

 

 

まとめ

 

  • 売上が1,000万円を超え、かつ、利益が500万円を超えたあたりから意識し始めて税理士に相談するとよいでしょう。

 

  • 利益1,000万円超えが続くようであれば、まず法人成りした方がいいでしょうね。

 

今回、途中に計算を入れてしまいましたが、計算式をきちんと理解しなくても、法人成りのメリットとデメリットがなんとなく分かっていただけたら嬉しいです。