※訳注:この記事は、記事投稿サイトMediumに4/30に投稿された記事を翻訳したものです。
https://medium.com/the-nozzle/new-3d-printing-shop-lands-in-the-heart-of-london-f89a2c7d64bf
3Dプリンターのリーディングカンパニー、iMakr社がロンドン中心地の賑やかなショピングエリア、オックスフォードサーカスに新しい店舗を構えたことが話題になっています。
これで、3Dプリンターはより私達にとって身近になったと言えます。
ロンドン・オックスフォードサーカスに新しくできたiMakr社の店舗
グランドオープンの際、最新の3Dプリンターとスキャニングマシンがお披露目されました。
このマシンについて、担当者に取材をしてきました。
また、2階建ての店内の様子や店舗で体験できることもレポートしていきます。
全身のスキャニング
一番驚いたのは、自分自身のミニチュア人形を作れることです!
これには、大きな卵のような形をしたiMakr社の全身スキャニングマシン
「Mini-You」が使用されます。
「Mini-You」はまるでiMakr社に着陸した宇宙船のようです。
このマシンには少なくとも10個の高解像度カメラが付いていて、人が中に入り、ターンテーブルの上に乗って回転すると連続して写真を撮ってくれます。
中はとても静かです。
自分を3Dプリントしてもらいます。
様々な角度から撮影された全ての写真をソフトウェアが統合して、持ち歩けるファイルとしてデジタルの世界にあなたの全身が再構築されます。
私達はデジタルの胸像を撮ってもらいました。後ほどフルカラーSLS(※1)で3Dプリントしてもらいます。(安くはないです!)
(※1)SLSとはSelective Laser Sinteringの略で、粉末をレーザーで焼き固め物体を作る技術のこと。
SLS Mini-Youの完成品(私じゃないです!)
産業用SLA技術
SLA 3Dプリントはベースの素材にしなやかな樹脂を使用しており、それによって、例えば宝石職人など非常に精密なディティールを必要とする職人の要求にも答えています。
最も高品質のマシンは産業用にのみ作られていますが、iMakr社は一般消費者向けに、EnvisionTEC Ultra 3SPという高性能の印刷を提供してくれるSLAマシンを販売しています。
Eグラス−おそらく最も印象的な3Dの素材
この、EnvisionTEC社のEグラスという素材を使って3Dプリントされた透明な水滴の模型を見てください。
透明なプラスチックやガラスを模倣する時に使われ、向こう側が見えるくらいの透明度に驚かされます。
試作品やエンドユーザー向けの製品用に、強度と安定性を備えています。
金属用SLM 3Dプリント
iMakr社が最初に発売した金属用SLM 3Dプリンターもまた、印象的なものでした。
ORLAS Creator(製品名)はステンレス金属、工具鋼、コバルト、クロム、アルミニウム、ニッケル合金、チタン、貴金属などで精巧なパーツを印刷することができます。
100mm × 110mmの表面積の物体を作れますが、この製品自体は少なくとも2立方メートルのスペースを取るので気をつけてください。
ORLAS Creatorによって金属で3Dプリントされたルーク(※2)
(※2)チェスの駒の一種
iMakr社によるこの素晴らしい製品によって、金属の3Dプリントがこれまで以上に一般消費者にとって身近になったと言えるでしょう。
Sinter It
店内にはデスクトップサイズのSLSマシンもありました。
この真っ赤なSinterit Lisa(製品名)は、以下の写真のように、粉末を使って2つの部分を一度にプリントすることが可能です。
最大ボリュームは110×150×130mmですが、非常に精巧な技術を持ったマシンと言えます。
Sinterit Lisaで卵型の3Dプリントが作れました。
高性能のPEEKプリント
PEEK(ポリエーテルエーテルケトン )は、高い温度対応性や衝撃特性、耐薬品性を特徴とする素材でエンジニアリングの分野ではよく知られています。
iMakr社は今、Intamsys Funmat HTとApium P155というPEEKを使用して3Dプリントを行う機械を発売しています。
PEEKを使用してプリントする機械たち
PEEKは専門科学や医療への活用に理想的な素材ですが、キロ600ポンド(※3)と高額な素材なので、この素材を使うににふさわしい革新的な3Dプリントのために取っておくほうが良いでしょう。
(※3)日本円にして約88,000円
3Dプリントの仕上げ
店内に置かれている大理石の像も、実は一般的なPLA樹脂で作られたものです。
実はこの像は、仕上げ段階なのです。充填、下塗り、本塗りなどいくつもの工程が必要であり、この仕上げに1週間をかけてiMakr社は芸術家Allie(アリー)さんの作品を仕上げました。
美術の学位のため、Allieさんは今完成に向けて3Dプリントの仕上げに集中しています。
細部のスキャニング
iMakr社には非常にハイスペックなスキャナーがあるので、試しにスキャンをしてみました。
この手持ち式のスキャナーはスキャン中明るい光を発して、リアルタイムでデジタル画像をソフトウェア内に再構築します。
これをスキャンしてみます。
自分でスキャナーを買うことは大きな投資であり、たくさんのものをスキャンする時くらいしか有用ではない、とiMakr社のリサーチディレクターGuillaume(ギヨム)さんは言います。
「スキャンしたいものがそう多くないなら、私達が提供するスキャナーを使うほうがよりコスパが良いと思います。」
家具も作れる?!
店内を見ていると、ライトアップされたグミのような熊が目に入りました。
暖炉と同じくらいの高さがあるこの熊は、ぽっちゃりとしていてカラフルです。
どのように作られたのでしょう?
持ち帰ってもいいかしら?
これには巨大なDeltaプリンターが使用されます。非常に巨大なので、一般的なフィラメント(※4)は使えないのです。1巻分では全然足りません!
(※4):3Dプリントに使用される素材の総称。細長い糸状の材料で、リールに巻きつけてある
代わりに、粒状のプラスチックが使用されます。それらはノズル内で溶かされ、厚い層となって流れ出てきます。
適当な間隔でプラスチックに染料を加えることで、熊には線状の色が付くのです。
iMakr社の中に置いてある椅子も、同じようにDeltaを使って作られたというのだから驚きです。
とても大きいです。
カスタムデザイン
私達はiMakr社ヘッドデザイナーのJames(ジェームズ)さんに会うことができました。彼から、顧客と一緒にカスタムモデルを作る際のプロセスについてお話を伺いました。
がおー!
「お客様が望んでいるものがはっきりしている場合は、その特徴に応じてモデルをデザインします。しかし、お客様が自分のアイデアに対してぼんやりとしたイメージしかない場合も多いので、その時は彼らのコンセプトを明確にしてユニークなデザインを作るお手伝いをします。」
Jamesさんは、Zbrush(製品名)を使って作ったブレスレットなど、自分の作品を見せてくれました。
私達の目の前にはとても美しいジュエリーが並んでいますが、たとえば指輪を作る場合、SLAプリントがモールド(鋳型)や銀製の完成品のパーツ作りにどのように使われるのかを説明してくれました。
SLAプリントされた樹脂型を使って作られた銀製のリング
乾杯!
私達は彼らの技術に圧倒され、時間を忘れて話をしてしまいました。
いつの間にか3時間も過ぎていて、楽しい夜も終わろうとしていました。
iMakr社の創設者Sylvain Preumont(シルヴェーン・プルーモント)さんとCEOのEric Savant(エリック・サヴァント)さんが、iMakr社の歴史と重要性について語ってくれました。
会社設立から5年がたった今、iMakr社は世界最大の独立した3Dプリント会社です。
2013年に初めての店舗のロンドンのクラーケンウェルにオープンし、翌年に2店舗目をマンハッタンにオープン。
旅行者や買い物客にとって利便性を高めるため、また多くのデザインスタジオにも近いため、会社はクラーケンウェルからオックスフォードサーカスに移転予定とのことです。
Preumont さんはパリにも店舗を構えてフランチャイズモデルを展開し、今後世界中にiMakr社の店舗を構えられるようにしていくという計画を発表しました。
iMakr社の店舗住所は以下です:
17 Wells Street, W1T 3PF